私は炊飯器

私が得意なこと

ふっくら美味しい

ご飯を炊くこと

 

でも 自慢じゃないけど

私ちょっと多機能なの

炊きこみご飯とか

ケーキのスポンジまで

焼いちゃうよ

 

元々このおウチには

炊飯器あったのよ

 

でもね、その炊飯器に

大事な用事が出来ちゃって

仕事をお休みするんだって

 

1年したら帰ってくるんだって

帰って来れないかも知れないけど

そういう予定なんだってさ

 

だから、代わりに私が

ご飯炊くことになったの

 

美味しいご飯が炊けるとね

みんなが喜んでくれる

嬉しいよね 

 

硬い目のが好みの人には硬い目

柔らかいのが好きな人には 柔らかく

新米はちょっとコツがいるんだよ

 

一生懸命炊いたんだ

たくさん たくさん たくさん

私はこの仕事が大好き

 

でもね・・・・・

もう1台が帰ってきたよ

1年経ったから 帰って来た

 

ここに炊飯器は

2台はいらない

使い古しの炊飯器を

引き取ってくれる

ウチもない

 

でね、おウチの人が言ったの

「もうご飯炊かなくていいから

ケーキスポンジ焼いてくれませんか」

 

私、ご飯を炊くのが好きだったの

上手に炊くよ?

美味しく炊くよ?

 

でも、仕方がないよね

帰って来た炊飯器は

ケーキを焼いたりは

出来ないんだもの

 

次の日から

私はスポンジを焼いた

だけど、どんなに頑張ってみても

オーブンには敵わない

 

横には ご飯を炊く炊飯器

みんな喜んでる

 

ここには 思ったように

スポンジを焼けない私

みんな困り顔

 

心の中で涙が止まらない

どうして?

ご飯を炊くなら

出来るのに・・・

みんなに喜んでもらえるのに

 

どうしても、どうしても

ご飯を炊きたかった私は

自分から売り込んだ

 

「炊きこみご飯はいりませんか?」

 

おウチの人も

スポンジを焼こうとしない私を

持て余してたから

「一度炊き込みご飯作ってみて」

と言ってくれた

 

炊き方を思い出すのに

とても時間かかって

苦労したけど

「美味しい」

と言ってくれた

 

私の仕事

私だけの仕事

 

でもね・・・・

 

よく考えたら

私は炊飯器じゃない

人間だったよ

 

自分の identityや存在意義に

名前なんてついてない

 

仕事が決められて

生まれる人なんていない

ここは何時代なんだ?

 

私はきっと

自分が炊飯器だって

思い込んでただけ

 

得意・不得意はあるけど

人間だもの

いくらだって

出来ることを増やせる

 

炊き込みご飯は

一時しのぎ

 

私もいつか

周りの人の求めに応じて

美味しいスポンジを

焼けるようになれるよね

 

ずっと忘れてた

大好きだった歌

 

 

猫が猫であるように

犬が犬であるように

全身全霊

僕でありたい

 

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